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2019-08-22

一緒にアフリカにヒーローを!! マンガ家・星野ルネ氏インタビュー!

8月15日(木)よりマンガラボ!にて新コンテスト「アフリカンSFヒーローの作画者募集!」が開始! 原作者にはカメルーンと日本のシャッフル育ちのマンガ家・星野ルネさんをむかえ、大賞はマンガPark&海外版アプリManga Park Wでの連載確約という超ビッグスケールなコンテストです!

今回、原作者の星野ルネさんにコンテストの意気込みや星野さんのルーツについてお話を伺いました!

↓星野ルネさんのスペシャルメッセージ動画も公開中!↓

■カメルーンと日本のシャッフル育ち!? 関西弁を使いこなすアフリカ人星野ルネさんって何者!?

――星野さんはいつから日本にいらっしゃるのですか?

星野: 僕は母親の再婚を機に4歳のときに日本に移住してきました。幼稚園・小・中・高と日本の学校で学びましたので、この通り日本語はバッチリです(笑)。住まいは関西だったのでバリバリの関西弁で話します。8年前にビッグになりたくて上京してきました!

両親は関西に住んでいて、祖父母はカメルーンに住んでいます。ジャングルの手前の村で電気も水道も通っていないようなところに住んでいます。そういう風にいうと、すぐに槍を持ってヤァヤァといったものを想像されると思うんですけど、全然そんなことはないです! トタン屋根の土壁の家で、服も普通に着ていますよ。

――カメルーンにはどのくらいの頻度で行かれるのですか?

星野: 2、3年に一度くらい帰ります。飛行機で20時間、フランスまで12時間、そこから8時間かかります。空港に着いてからも、出身の村が本当にジャングルの手前にあるので、丸一日かかります。はじめはアスファルトの舗装された道を走るのですが、途中から舗装されていない赤土の道をガタガタと揺られながら村まで帰ります。

さらに、帰郷すると親戚が国中に散っているので村に帰るまでのルートに親戚がいると挨拶をしていかなければならないんです。無視して行くわけにも行かないので、挨拶しながら帰っていると1日かかってしまうんですよ。それがもう大変で(笑)。

祖父母は子供が多いので、叔父や叔母がたくさんいるんです。「私を覚えているかい?」と言われるんですが、小さいときにカメルーンを離れてしまっていたので、正直覚えてなかったりします(笑)。

――マンガ家として活動し始めたのはいつ頃からですか?

星野: もともと上京したころはタレント活動をしていました。アフリカ系日本人というあまり馴染みのない立場の人間の生い立ちとか、どんな風に日本で暮らしているのかとか、実際はこんな感じだよ、こういう日本人もいるんだよというのを伝えたかったんです。

はじめはテレビなどのメディアに出演して自分を表現しようと考えていたんですが、テレビは誰かが考えた企画があってそれに合った人が呼ばれるんですよね。自分がしたい表現である、アフリカ系日本人の日常みたいなものは自分じゃないとなかなか発想してもらえない、自分から発信しなきゃいけないんだと気付いたんです。

そんなときに、ここ何年かでSNSがブームになってきて、自分で何かを表現する人が増えてきたのを見て、これからは大きなメディアに乗っからなくても自分で発信できるんだ、と思ったんです。じゃあどうやって自分の表現したいものを伝えるかと色々と迷っているときに、子供のときから好きだった絵やマンガという手段で自分を表現しようと思い立ちました。そしてTwitterに自分の生い立ちのエピソードや日本での生活における意外なギャップを投稿し始めました。それがきっかけで、フォロワーも増えてきて色々なお仕事をいただけるようになって、気がついたらマンガ家になっていましたね。

■マンガは僕の原点

――星野さんのマンガとの出会いはいつですか?

星野: 保育園のときに読んだ、マンガっぽい絵本が最初ですね。絵本なのに1ページの中に何コマか絵が描かれていて驚きました。絵本はページをめくらないと絵が変わらないのに、こうやってコマを置くことで動きが生まれる表現の仕方があるんだ、と雷に打たれたような感覚でした。それからマンガが描きたくなって、『ドラゴンボール』『ガンダム』『ポケットモンスター』など、その時代時代で影響されたものをモチーフにしてマンガを描いていました。手塚治虫さんや宮崎駿さん、ディズニー作品も真似したりしていましたね。

子供のときは、自分が普段いる世界とは違う世界に行くことができるので、冒険活劇やアドベンチャーなどの冒険物を好んで読んでいました。

まだ日本語が話せなかったときからマンガを見様見真似で描いていて、初めて日本人とコミュニケーションをとったのが絵だったんです。そういう意味で、僕にとってマンガや絵は原点です。大人になってマンガや絵で自分を表現しようとすることは原点に立ち返った感じですね。

――マンガを投稿した後の反響はいかがでしたか?

星野: 正直、自分の想像を超えた予想外の反響がたくさんありました。はじめは、日本人で同世代か上の年代の人、もしくはプラスマイナス5歳位が読んでくれて「へーそうなんだ」くらいの感想を予想していたんですけど…。

まず僕と同じように海外にルーツを持っている人が「あるある! 自分もそう思っていたけど、言語化されていなかったものがマンガに描かれている!」といった反響がありました。他にも、国際結婚された方のお母さんが「自分の子供がどんな想いで日本で暮らしているんだろう」という気持ちをマンガで理解したり、学校の先生が、ハーフの子供がどんな風に考えているんだろう、どういうふうに接してあげたらいいんだろうとヒントをここで求めたりしてくれていました。あと海外からもメッセージが来ました。

今回はたまたまアフリカ人が日本で育った結果こうなったという結果だったんですけど、これってマジョリティの人とマイノリティの人が同じ空間に暮らすとどういうことが起きるのかということなんですよね。中国で育ったアフリカ人の人も読んでくれて「オレもこれあったわ」とか、世界中にいるマイノリティの人たちが感じる似たようなケースがたくさんあって、そういうケーススタディ的なこととしても使われたりしていました。

一番うれしかったのが、僕の講演を聞きにきてくれた高校の先生から聞いた話です。海外から日本に転校してきた女の子が、すごく反発して周りに溶け込めなかったらしいんですけど、先生がこの本を見せたら同じような境遇なのにこんな考え方や受け止め方があるんだと分かって、目からウロコが落ちたらしくてすごく穏やかになって学校に来られるようになったんです、とわざわざ言いに来てくれたんです。それを聞いて、ああ役に立ってんだな、やってよかったなとすごく嬉しくなりました。

■新手の詐欺かな?と思うほどのフロンティア精神

――今回の作画コンテストのお話を聞いたときにどのように思われましたか?

星野: お話をDMでもらったときは、新手の詐欺かなって思ったんです(笑)。まさか、こんなことはないだろうと。普段は、アフリカでたこ焼きを作ってるんですけどたこ焼きのマンガを描いてくれませんか?とか色々なDMがくる中で、アフリカ市場向けにマンガを作ろうと思っているんです…って書いてあって(笑)。「え? 何言ってるんだろう」って思っていたんですけど、ちゃんと読み進めていくと会社の名前も有名な出版社だし…「ほんとに!?」って思いまして、アポイントをとって趣旨を教えてもらって「あ、なるほど」と。

アフリカってこれからどんどん発展していって、中産階級が出てきて娯楽を楽しむ人が出てくるし、たしかにアフリカのヒーローって少ないなって話を聞いていて共感したんです。僕自身もアフリカの少年を主人公にしたマンガを描いてみたいと思っていたんですけど、なかなかどうやっていこうかなと思っていた中でこのお話をいただいたんです。冒険活劇を作るのはとてもむずかしいと分かっていたので、できるかなと思いながらも白泉社さんのフロンティア精神にも影響されてせっかくなので挑戦してみようと思いました。

担当: 「Manga Park W」は現在アフリカ(ナイジェリア・ケニア)向けに配信して20万DLを突破しているのですが、主に日本のマンガをアフリカに配信しているだけになっています。そうではなくアフリカ向けにマンガを作りたいなとなったときに、アフリカの人が描いたマンガを持っていけたらと考えたんです。アフリカ出身で、マンガ家で、日本語で、日本で打ち合わせができる人いないかなーっと思っていたら、一人だけいらっしゃったんですね、星野ルネ先生が(笑)。

(※注)現在はハヤマックス先生のアフリカ向けマンガ「ニッキ!-Nickey’s diary-」も絶賛配信中です。

 

星野: 運命の赤い糸ですよね。

――顔合わせがすんだ後、どんな作品を作ろうというお話があったのでしょうか。

星野: 打ち合わせは本当に色んなパターンのアイディアがでました。そのときはすぐにまとまらずお互い宿題じゃないですけど一度持ち帰ったんですね。その帰り際、やるとしたらSFアクションだなって自分の中で思っていたら、メールでサジェスチョンが4パターンくらい届きました。その中で我々(白泉社)が一番やりたいと思っているのは、「SFです」と書かれていたんです。それを見て、「おお! それも合ったか!」と、ぜひぜひ! これはいいぞと思いました。

その後、自分が昔から考えていた企画がいくつかあって、それを複合させて作ったのが今回のお話です。

■ジャングルを一緒に歩いてくれるパートナーが欲しい!

――とても順調に進んでいったのですね。お話作りも順調ですか?

星野: とても難しいですよね(苦笑)。今まで僕が描いてきたエッセイマンガは自分自身の物語なのですべての材料が自分の中にあるんですよね。でもSFでアクションで冒険物となると、自分が持っているアフリカの材料もあるんですけど、そうじゃないものを新しく作っていく必要があるんです。それと自分が持っているものとをどう組み合わせて、さらにおもしろく編纂するためにどうすればいいかっていう…ものすごくトレーニングと試行錯誤が必要です。

完全にジャングルの中を草をかき分けながら進んでいるような状態ですよね。ジャングルの中をトランシーバーで連絡をとりあって、「これでどうでしょうか?」「こんなの出てきたんですけどどうですかね?」って、あーじゃない、こーじゃないみたいなことを話し合いながら、黄金の在り処を探しているという感じです(笑)

沼に落ちそうになったり、猛獣が出てきたりするジャングルをなんとか進んでいます。

僕はマンガだけをやってきた期間が長いわけではないです。作画をしてくれる方の中には、僕よりもずっと長くマンガを描いて来た人もいると思いますので、僕のもつエッセンスと作画さんが持つ技術なりテクニックなりがうまく噛み合わさるといいなと思います。ジャングルを一人で歩くより二人で歩くほうが絶対にいいと思うので、クルーが増えてくれたほうが(笑)。僕が薪を集めている間に、水を汲んできて欲しいとか…。今は全部自分ひとりでやっているので…本当に今パートナーが欲しい!!

希望と切実な思いがあります。そういう意味で本当に楽しみなんです。どんな人が応募して来てくれるのか。

――今作っているお話で大事にしていることはありますか?

星野: せっかくアフリカで配信されるものなので、どうせならアフリカ人に持っているイメージに近いこともそうなんですけど、アフリカ人が大事にしているものを要素として入れたいなと思っています。アフリカ的な世界観や価値観、ファッション性や好きな音楽、音であったり、アフリカの人が持っている思いやアフリカの人がこれからどんな風に生きていこうと思っているかといったスピリッツを、自分が聞いたものも含めて要所要所で入れていこうと思っています。

カメルーンはアフリカのミニチュアと言われるほど地形がバラエティに富んだ国です。アフリカ中のほぼ全部の動物がカメルーンで見られるというくらい、動物とか生態のバリエーションが豊富なんです。固有な文化をもった民族がたくさんいて、自然が豊かですという話をすると、アフリカといえばジャングルやサバンナに住むような動物と一緒に暮らしているようなイメージを持たれる人もいるんですが、まったくそんなことはないです(笑)。鶏や豚などはいますが猛獣とかは、そういう場所にいかないと会えないです。ですからマンガ内でもそうなのですが、街に動物は出てこないようにしています。

街に動物がうろうろしている描写を描いてしまったら、逆にアフリカの人に「いねーよ!」ってツッコまれちゃいます(笑)。そういったところは、こいつアフリカのこと分かってるなって思ってもらえるかなと。動物は街にはいない。分かってるなこいつって。

精霊やトーテムとして動物がモチーフになったり、祭りや儀式のときにみんなが踊ったり、太鼓を叩く人がいて女の人が歌いはじめてみんなが踊りだすといった、アフリカの人が普段からやっているようなことは要素として入れていきたいですね。

ただ、アフリカらしくしすぎてもダメだと思っています。自分がマンガを読むときに面白いと思っていることは、自分の知らない世界にいけるから面白いのであって、本当にアフリカだけのものにしてしまうと子供がワクワクしないと思うのです。アフリカにないものもそこになければならないので、アフリカらしさとアフリカらしくないところのバランスを大事にしなければいけないなと思っています。

実は日本らしさも入れようと思っているんです。日本のマンガは世界中の人に愛されていて、カメルーンのジャングルの手前に住んでいる子供も日本のマンガのキャラクターのマネをして遊んでいるぐらい受け入れられています。僕は日本のこともよく知っているし、日本のマンガもよく知っているので、日本らしさをちょうどよく融合できるんじゃないかなと思っています。

日本の人が読んでも分かる日本らしさも感じられるし、アフリカらしさも感じられる、さらに誰もまだ見たことのないSFなものも感じられる作品を作りたいと思っています。日本人をモチーフにしたキャラクターも物語内の重要なキャラクターとして登場させようと思っています。

■アフリカだけじゃなく世界中の少年が憧れるヒーローを生み出したい!

――スペシャル動画で、アフリカにはヒーローが足りないとお話をされていましたが、どういうことでしょうか?

星野: アフリカにも『スーパーマン』や『スパイダーマン』、日本のマンガの『ドラゴンボール』、『NARUTO―ナルト―』など色々なヒーローが入って来ています。ですが、アフリカの子供たちが彼らの真似をしたいと思ったときに、外見的な特徴に距離を感じてしまうことがどうしてもあるんです。そこで自分たちと同じような見た目だったり、ルーツをもったヒーローが必要なんです。

芸能人でいうと好きな芸能人はいるけど、違う出身の芸能人よりもオレの街から出た人、オレの母校の先輩なんだ、みたいな感じが欲しくて。僕も子供の頃に色々なキャラクターの真似をしましたけど、母校の先輩はいなかったので(笑)。だったらアフリカの子供たちが真似できるようなアフリカから出てきたヒーローを、僕が1人増やしたいなと思ったんです。逆に日本やアジア、ヨーロッパなど他の地域の方がアフリカンヒーローの真似をしてくれたらもっと嬉しいですよね。最終的にはみんなが憧れるヒーローにしていきたいです。

アフリカは長いこと停滞していたけど、ようやく目覚めて発展している最中でこれから色々なカルチャーや文化が盛り上がっていくと思うんです。そんな最初の波に乗ることができるチャンスなので、日本で普通に暮らしてマンガを描いているだけじゃ体験できないことや出会えない人、アイディアや場所に行けると思います。

――さいごに投稿者へメッセージをお願いします。

担当: 今回原作ありきの募集にはなりますが、そんなに身構えないで大丈夫です。試しに描いてみようかな、みたいな人でも大歓迎です! 普段のコンテストは投稿したら賞がもらえます、というものですが、今回は「連載確約」ですので、最近絵の方は頑張っているけどなかなか連載にはこぎつけていなくて…といった人でも連載のチャンスがあります! そういうところを魅力に思っていただければと思っていますのでまずは気軽にご投稿ください!

星野: 自分の感性を広げる最大のチャンスなので、誰も見たことのないような前人未到の場所に一緒にいきましょう! アフリカ取材もできるかもしれないですね。僕の里帰りに一緒にカメルーンに行ったり(笑)。アフリカ出身の飲み友達ができると思っていただければ!

 

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