田中メカ先生×緑川ゆき先生スペシャル対談! 第2回

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このコンテストの開催を記念し、前回に引き続き田中メカ先生と緑川先生のSP対談を掲載。今回はデビュー後の読切掲載、連載について語っていただきます!
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◆読切から連載へ
――デビュー後・第一作の掲載も、お二人とも割とタイミングが近かったんですね。
※1998年『LaLaDX』11月号に田中先生の受賞後第一作『無敵のハートビーター』掲載、1999年『LaLa』2月号に緑川先生の「あかく咲く声」が掲載。
田中メカ先生(以下、田中) うん。でも、受賞後第一作目が本誌で、しかもカラー付きという形だったから、なんとなくゆきちゃんは常に前にいるイメージがあった。先に行っているイメージ。
緑川ゆき先生(以下、緑川) 本誌でカラー付きだったのは、たまたま、どなたかがお休みされて…?後にそういう話を聞きました。カラーの扉と枚数的にちょうど空きがあったから、当時の編集さんが有り難い事にぶっ込んでくださって!この頃のメカさんって、本誌で読切も載っている上に、『DX』にも載っているみたいな印象が。
田中 本誌の読み切りもすごい不定期だったから、間が空いたら「出せ、出せ」って言われていて。私は当時の担当さんがすごいスパルタで、とにかく出しなさいと。出せと言っておいて落ちたりもしていたし。まあ、でもそこまで落ちたりはせず、意外と通していただけたりはしてたんですけど。『お迎えです。』も何だかんだと低空飛行のまま、うまいこと載せていただいて。
――1999年『LaLa』3月号に田中先生の『お迎えです。』が初登場、その一号前の2月号に、緑川先生の読切『あかく咲く声』が掲載されました。
田中 そうです。うわあー、恥ずかしい(笑)。そうですね。まだ働いている頃に描いたやつですね。その年の3月まで働いてたのかな。それから、東京に来て。コミックスも出てないくせに上京してきちゃったから、貯金切り崩しながらやってた。なぜか、アシスタントもバイトもしないで、ぎりぎりでという感じ。
田中 『あかく咲く声』って『お迎え』と同じ感じで、最初は読切だったんだっけ?
緑川 うんうん。読切を何回かやった後に、という…。
田中 本格連載はもうちょっと後か…。昔はそういうのが多かったね。
――お二人とも本誌に掲載された読切が好評で、そのまま連載に。
田中 その頃、一気に私とゆきちゃんとか樋野先生とかがバーッと連載を始めた時期だったんですよね。
緑川 そう。それで色々編集さんが企画してくださって、この頃いろいろやってたんですよ。出たての作家さんについて、編集さんがその作家さんにキャッチフレーズを付けてくださったりして。
田中 そうだっけ?
緑川 私、「不思議少年大好き」って書いてくださってて(笑)。
田中 (笑)。
――この号なんかは、お二人が漫画賞の募集ページにコメントとイラストを。
田中 そんな、うわー、そんな昔の恥ずかしい(笑)。
緑川 読切は私が載せていただいた後ぐらいは、もうメカちゃんが『お迎えです。』で表紙とかいっぱいしてて、カラーが多くて大変そうな時があったなと。
田中 2000年越えてからかな。まあ、仕事は増えたね。『あかく咲く声』は結構終わるの早かったなあ。全3巻だっけ?
緑川 そうそう。その頃って本当に熱量で描いていたから、「『あかく咲く声』をそろそろ終わろうと思います」って編集さんが仰ったから「そろそろ終わるのか」と思ってネーム描いて出したら「これが最終回になります」と急に(笑)。「すいません、あと3日ください」と言って、丸々描き直しました。だから、最終回は別の内容で2回描いた。
田中 そうなんだ!
緑川 だから、もともとのやつは覚えていないんですよ。捨てちゃったんで「もうなし」と思って。でも、それぐらいはやる気があったというか、今はちょっと3日では描けないですけど。
――田中先生は『お迎えです。』連載中の思い出等はいかがですか?
田中 3巻のラスト・ちさっちの回で、初めてキャラクターの告白シーンを真剣に描いたんです。その時アンケートが跳ね上がって。言葉をひねらずに真っ直ぐ伝えたことで、ものすごい影響があった事にちょっと驚いたんですよね。大事なんだなと思って。「好き」という言葉をしっかりとしかるべき場所で使うと、とんでもない武器になるんだな、という事にその時気付いて。「少女漫画という土壌」みたいなものを自覚しました。
緑川 そうだね。当時「みんな恋が好きだね」って、しみじみ話した気がする。
田中 あんまりね、そういうのじゃなかったからね、昔は。ハートフルものよりも、やっぱり恋愛に特化するととたんに注目度が変わるというか。少年漫画で、日常ものが格闘ものになっていくような感じなのかな。
――その後、お二人とも読切や連載をされて、2007年に田中先生の『キスよりも早く』が連載開始、緑川先生の『夏目友人帳』が本誌へ移籍となりました。
田中 ねー、ちょっとびっくりした。そうだったんだね。
緑川 正直必死で、月刊中の記憶はあまりない。
田中 あははは(笑)。
緑川 隔月の『DX』でいっぱいいっぱいだったのに月刊になったので…。最初の頃は何とかやりくりしていたんですけど、後半になるともう月に3日ぐらいしか布団で寝られなくて。
田中 うひゃあ。そうか、移籍連載からアニメって結構早かったんだね。1年足らずで。
緑川 たぶん そのお話が来ていたので本誌に移籍に。
田中 なるほど。ちょっと待ってよ、『蛍火の杜へ』って2002年なんだ。ここも、ちょっとターニングポイント感があったよね。
緑川 そうだね。当時 恋愛ものが描けないので、(恋愛ものが得意な)二代目担当さんに付いていただいている間は、恋愛ものを描こうと頑張って。
田中 そう。なんか縛ってるなって思った。「しんどくないか? 大丈夫かな?」と思ったんだけど。
緑川 でも、担当さんがとっても正直に意見を言ってくださっていたので、これは落としたいな、という。まだ、そういう情熱があったもので。
田中 熱い。なるほど。素晴らしい。
◆掲載している事が便りに
――デビュー後しばらくしてお二人とも連載が始まりました。その間もお二人は連絡は取り合っていたんですか。
田中 いつしかしなくなったんだよね。
緑川 新年会で会っておしゃべりできたらいいな、と。やっぱり大好きですけど慣れ合ってはいかんかなあと(笑)。
田中 ねぇ、そうなんだよね(笑)。ほんとに。昔は、やりとりがFAXだったんですけど、感熱紙が残ってたよ。ゆきちゃんとやりとりした。
緑川 本当に?
田中 すごい、まだ残ってる!と思って。引き出しの奥底にファイリングしてあるやつをペラーッとやったら。消えてるやつもあるんですけど。
緑川 私も全部取ってあります。
――すごい!どういうやりとりがあったんですか。
田中 多分ちょこちょこと、他愛のないやりとりをしていたんじゃないかな。
――近況報告のような。
田中 そうそう。でも、いつしか連絡を取り合わなくなって。その期間は10年ぐらいかな。『夏目』が始まってからゆきちゃんが忙しくなって。でもお互い載ってるから、まあいいやって。「とりあえず元気でしょう?」みたいな。
――誌面上で、元気かどうかを確かめる…かっこいいですね!
田中 掲載してることがとりあえず便りになるからね。「頑張ってますぜ」っていう。
緑川 うんうん。
◆お互いの描く男性キャラクター
――お互いの作品でこれは覚えている、特に好きだった作品を教えてください。
田中 いやあ、なかなか選びきれない。
緑川 いつも思うんですけど、メカちゃんの短編のタイトルが好きなんです。
田中 あらあら、ありがとうございます。
緑川 どれも素敵で多彩。カラーがメカちゃんっぽいタイトル。
田中 私はやっぱり『あかく咲く声』かな。あの頃、とにかく新人だったから、何でもかんでも穴が開くほど読んで吸収しようという時期だったから、ゆきちゃんのやつもめちゃくちゃ読んでた。辛島君がすごい好きだったし。
緑川 ありがとうございます。
田中 ミステリアスというのではないんだけど、熱を内包した少年描くのうまいよね。夏目もそうだけど、「一見そういうふうに見えないんだけど…」という男の子が。
緑川 嬉しい。
田中 でも最近は多軌兄が好き。線が細い感じなのに自転車担ぐところとか!「好き」って言って、描いて送ったんですよ!(笑)

※初公開!田中メカ先生の描く「夏目友人帳」多軌透の兄・勇。
緑川 でも、私も『お迎えです。』がすごく好きで。素朴そうな男の人のかっこよさが描ける女性作家って、どういうことなんだっていう。
――分かります。
緑川 めちゃくちゃかっこいいけど、本人は素朴だと思っているという男の子の描き方がメカちゃんはすごく上手。それがリアルで。それを女性が描いているというのがすごく不思議というか。性別の問題じゃないんですけど、日常で男の人をかっこいいと思ったことを わざわざ大きく取り上げないで、仕草とかセリフの受け答えで出せるのがすごい。そういう事の繰り返しで読んでいる女の子は、知らないうちに「素敵な男の子だな」と思ってる。
――確かに、“男の子感”の見せ方が、田中先生はすごく素敵ですよね。
緑川 「おはよ」って言った時の目線の感じとかで「ああ、この男の人、優しいんだろうな」というのがわかるというか。男の子なんだなっていう。
緑川 かっこいい男の人っていうのはやっぱり見て分かるから、それが伝わりやすいエピソードにしたいと欲が出ちゃうんだけど、普通の会話内で「これはかっこいい男だぞ」ってわかる。
――そうなんですよね。本質的にかっこいい、みたいな感じで。
緑川 だから、こんなにかっこいい人の友達なら、かっこいいんだろうな・優しいんだろうな、という連鎖がメカちゃんの漫画にはある。そのキャラを理解している人なら優しいんだろうなとか、見る目あるんだなっていうのを、「そう感じて」と言わなくても、すり込ませていくのがすごく自然。
田中 ありがとうございます(笑)。めっちゃ考察してくれてる(笑)。
次回は、キャリアを積んだお二人の変化や具体的な漫画づくりについて語っていただきます!
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