toggle
2019-10-08

田中メカ先生×緑川ゆき先生スペシャル対談! 第1回

10月27日(日)の一日限定、マンガラボ!×LaLaがタッグを組んだ新コンテスト「ラララボ!1dayハイスピードマンガ賞」が開催されます。投稿してからデビュー決定まで、たったの1週間! 投稿作品すべてにLaLa編集部員がコメント! さらに田中メカ先生、草川為先生、藤原ヒロ先生、白泉社 菅原社長・鳥嶋会長からもコメントがもらえるかも?

コンテストの詳細はコチラ>>

このコンテストの開催を記念し、長年LaLaをけん引してきた田中メカ先生と緑川先生のSP対談を掲載!実はお二人、同期デビュー!デビュー20周年を記念して行われた対談の完全版を、大ボリュームでお届けします。

お二人の出会い

――初めて会った時の事は覚えてますか?

田中メカ先生(以下、田中) 初めてはセミナーだよね。LMGセミナー。

緑川ゆき先生(以下、緑川) うん。セミナーで呼んでいただいた時に、ちょうど偶然、隣の席で。

田中 めっちゃ覚えてる。 挨拶するときに、ゆきちゃんの手が震えてたの。「緊張してる!」って(笑)。

緑川 ものすごく緊張してた。漫画を描いてる人に会ったことがなくて。だから、自分が描いてるっていうのもちょっと照れくさいし、漫画を描いてる方とお話をする事がなかったので、どうしようと思って。

――その時から仲良くなったんですか?

緑川 メカちゃんは初めて会った時から、すごく優しくて話しかけやすい。どんと来いというような優しいオーラが出てて。ブルブル震えて「よかった、嬉しい」と思ってた(笑)。

田中 あははは(笑)。セミナー後に泊まったのホテルの部屋は違ったんですよ。でも、最後ぎりぎりで連絡先の交換というか、ちょっと絵を描いて住所書いて、みたいなやりとりをして。

――その時のセミナーの講師先生って覚えていますか。

緑川 マツモトトモ先生と六本木綾先生です。本当にすごい方々が…。

田中 本当にド素人だったから、活版印刷とオフセット印刷の違いとかをその時に教えてもらって。フワッとしたトーンのオフと活版の表現の違いとか、トーンのパーセンテージとか、すごく一生懸命メモを取ったのを覚えています。探したらその時のノートが見つかる気がする。

投稿からデビューまで

――お二人の投稿歴を教えてください。

田中 LMGに2回出して。1回目はもう歯牙にもかけられず…。そのあとLMSでベストルーキーを取って、そのあともう一度LMGに出してフレッシュデビュー賞という。

緑川 LMSが1回で、LMGが2回ですね。

――お二人は何故LaLaに投稿を?

田中 なんとなく選択肢で、『LaLa』か『別冊少女コミック』か『スピリッツ』の3択だったんですよ。たまたま1回目が『LaLa』だった。

――順番に出していこうと思ってたんですね。よかった、LaLaが一番最初で!(笑)

田中 デビューできたのはラッキーだったんですけど。『別コミ』を選ぶのも、当時『BASARA』とか『BANANA FISH』がやってたからで。『スピリッツ』は自分がティーンの頃に読んでた作品が多く、自分のベースになった作品とかも多かったので。

――では、最初から「少女漫画が描きたい!」というわけではなかったんですね。

田中 全然。だからデビュー当時、『LaLaDX』を読んで、諸先輩方のトーンワークとかを穴が開くほど見てました。森生まさみ先生とか六本木綾先生とか、トーンワークがすごくきれいだったから、「こうしなきゃ駄目なんだ!」と。

――緑川先生は何故『LaLa』に投稿してくださったんですか?

緑川 たぶん『花とゆめ』に3回ぐらい投稿して、まったく引っ掛からなかったので。でも、白泉社さんで描きたかったんです。日常プラスちょっと不思議な話も載せていただけるじゃないですか。私は漫画ちっくなものが描きたかったんです。

――幅広いジャンルの漫画が描ける、というのが決め手だったと。

緑川 学校へ行って、好きな人に会ってという話も素敵だなと思うけど、自分は描けないので。学校へ行ったら学校から出られなくて…とかいったお話が描きたくて、それはたぶん白泉社さんじゃないと載せてもらえないのではと。それで『花ゆめ』さんに出していたんですけど、本当に脈なしだったので「あ、やばい」と思って(笑)。

当時の『LaLa』もSFとか、恋愛じゃないお話も載っていたんですけど…ロジックがかっちりして、世界観の説得力がものすごい作品ばかりで。一緒に載った時に恥をかくのは自分だというぐらい、大先生・プロの方々が練り上げて、色々打ち合わせされて描いていらっしゃる作品が多いんだろうなと。そこにエセSFみたいなので切り込んでいくのは難しいと思っていたんですけど、でも、やっぱり白泉社さんで描きたいなと思って投稿していたら、当時の編集さんが拾ってくださった感じですね。

――なるほど。

田中 二人ともそうだよね。

緑川 そうだね。たぶん、単純にトキメキだけのものが描けないから。でも漫画は描きたい、女性読者さんに届け!…と。私はどちらかというと変わった話を少女漫画として描きたかったので。

田中 そうなんだ。

緑川 うんうん。

田中 そうか。あ、でも私は割と受賞からデビュー作から、結構普通の少女漫画を描いてたんだよな。なんで急に『お迎えです。』になったんだろう(笑)。ちょっとオカルティックなものが好きだったりしたから、そういう不思議なやつが描けたらいいなと思っていたのかな。で、やっぱり描かせてくれる雑誌だったんですよね。

デビュー

――そんな投稿歴を経て、お二人とも第18回LMG(ララマンガグランプリ)にてフレッシュデビュー賞を受賞・デビューとなりました。

田中 1998年8月号に確かLMGの結果が載っていて、その時の表紙は覚えてるの。森生まさみ先生の『おまけの小林クン』の桃を持っているやつ。

田中 そういえば、賞金10万円だったんだよね。

緑川 当時、賞金を下げて新設されたデビュー賞で。あとで笑い話だけど、正直言うと「金払ってでも載せてほしい」(笑)

田中 そうだね。ありがたかったんだよね、この枠は。そういえば、この時描いた似顔絵そのまま今も使ってるもんね。提出しろって言われたやつなんですよ。

緑川 私、「似てないから描き直して」って。当時の担当さんに…(笑)。

田中 そうなの(笑)。

緑川 一応似てると思うんだけど…(笑)。

――お二人の、それぞれの受賞作は覚えていてますか。

田中 覚えてるよ。 『珈琲ひらり』だよね。そりゃあ、やっぱり、ほかにないものだったから。

緑川 でも、私、あっちの「ごめんなさい」(※1)のほうが。

田中 懐かしい。女子高生と医者ものだったから、あの頃から、もう既に年の差属性が出てた。(笑)

緑川 ミッフィーちゃんが服上げてるキーホルダーがあって。「あ、これだ」って思って、お腹に「ごめんなさい」って書いてメカちゃんに渡そうと思ってたけど、渡せなかったなっていま思い出しました。

(※1) 田中先生の受賞後 第1作『無敵のハートビーター』の1シーン。(HC『お迎えです。』②巻収録)

 

――全く同じ回のマンガ賞でデビュー、というのも珍しいですよね。

田中 色々な人に聞くと珍しいみたいで、同じ回デビューでずっと一緒に、という人はあまりいないって言っていました。前後ならいるけど、みたいな。

緑川 そうだよね、うんうんうん。

田中 わたしたちの1回あとに葉鳥さんが。草川さんも2000年…?1年ぐらいあとかな?

緑川 いや、でもすごいね、ちゃんと覚えてるっていうか。記憶がある。

田中 でも、やっぱり新人の頃は同期がいたのは心強かったよね。

緑川 うん、うん。それはとっても。

田中 「同じ回デビューです」っていうの。

緑川 あまりいいことじゃないかもしれないんですけど、メカちゃんがちゃんと評価されてるとホッとするというか。時々「面白いって何だろう?」って迷い込んだりするんですけど、メカちゃんの漫画を読んで面白いって感じるじゃないですか。それがちゃんと雑誌に載り続けている、評価され続けている。
「大丈夫、まだ大丈夫だぞ。私が面白いって思っているものを、みんなも面白いと思ってくれているし、ちゃんと面白いものを描いてくれているメカちゃんを評価してるぞ」って。

――感覚がかい離していないという。

緑川 自分もなんとか乗っかるぞっていうか、分からない人に弾打ってるわけじゃないっていうのがあって。
例えば同じ時期にデビューとかした人でも、作品が分からなければ分からないじゃないですか。「こういうのがいまウケるのか。分からないな、どうしよう」とならないで、メカちゃんのを読んで素直に「面白い」と思える。それがなんか嬉しいというか。

田中 面白いと言ってもらえるのはありがたいけど、実際にどのぐらい反応があるのかどうか私にはよく分からないからなぁ。

――お二人とも、常に読者の反応を意識しながら、
「“面白い”とは」という事に向き合ってらっしゃるのが本当にすごいです…!

 

次回は、お二人がLaLaでデビューしてから読切掲載、連載までのお話について、語っていただきます!
第2回を読む>>

■田中メカ
1998年『Light Right ラビット』にて第18回LMGフレッシュデビュー賞受賞。2016年に最初の連載作品『お迎えです。』がTVドラマ化。現在『花ゆめAi』にて『鉄壁ハニームーン』を連載中。主な代表作に『キスよりも早く』『朝まで待てません!』等。
■緑川ゆき
1998年『珈琲ひらり』にて第18回LMGフレッシュデビュー賞受賞。2008年に『夏目友人帳』がTVアニメ化。第六期まで放送され、2018年には劇場版も公開された。『LaLa』にて『夏目友人帳』大好評連載中。主な作品に『蛍火の杜へ』『あかく咲く声』等。
関連記事