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2019-01-11

「日本のマンガを海外へ!」“白泉社一同、あなたをサポートします!”~国際版権課編~

「マンガラボ!」で編集者とマッチングし、実際に白泉社でマンガを描くことになったあなた! とんとん拍子でコミックスが出たら、海外でもマンガを出すことになるかも…!? そんな時に作品や作者をサポートしてくれるのは、どんな人たちなのでしょうか…? 今回は白泉社の作品を海外に広め続けている、国際版権課の加藤宏子さんにお話を伺ってきました。

コンテンツビジネス部…国際版権課課長 加藤宏子

海外のファンにマンガを届けるまでのお仕事です

――まず、国際版権課のお仕事について、教えてください。

国際版権課では、海外の出版社から「この作品を翻訳出版したい」とオファーを受けてから、契約条件を整え、最低保証印税を頂いて、出版されるまでの一連のやりとりをすべて行います。注目度の高い作品ですと複数の会社から同時期にオファーが来ることもありますが、その時は条件の良い所、初めての取引でしたら信頼のおける会社かリサーチをして契約します。

海外とのお仕事ですので、まず最低保証印税を頂いてからのスタート。それから、翻訳版制作用のイラストデータを用意したり…制作物の監修作業に移ります。

――監修とはどんなことをするのでしょうか?

海外出版社が上げてきたコミックスのデザインや奥付、宣伝物の内容を確認します。コミックスデザインは、アジアの出版社は日本のデザインを踏襲したデザインが多く、欧州のデザインは、オリジナルでデザインをする傾向がありますね。

ベルセルクの各国翻訳版

海外で、『ベルセルク』は白泉社の作品の中で、現在までで一番売れた青年マンガです。一方、少女マンガでは『フルーツバスケット』が1位。白泉社では1990年代前半から翻訳出版のライセンス契約を始めましたが、海外出版社の担当さんの中には、『フルバ』を見て育ったという方もいらっしゃるんですよ。現在は23カ国約90社との取引をしています。主に韓国、アメリカ、フランス、ドイツ、台湾の5カ国とのお取引が多く、続いてイタリア、スペイン…が来る感じですね。

いま、日本のマンガは世界の注目を浴びています☆

――日本のマンガは、どのようなものが人気なのでしょうか?

やはりアニメがヒットしている作品や欧米でなじみのあるヴァンパイアやゾンビものなどが受け入れられやすいようですが、マンガ市場が成熟し読者の裾野が広がってきた現在では、さまざまなジャンルの作品が受け入れられていると思います。

例えば『3月のライオン』は将棋を扱う人間ドラマですが、スペインの有力マンガサイトで「ベスト青年マンガ賞」を頂いたり、フランスの有力マンガ・アニメサイトでも、読者投票で「青年マンガ部門ナンバーワン」になったりしています。実際、将棋を知らなくても面白いですしね。

『高嶺と花』『なまいきざかり。』など日本を舞台にしたラブコメも人気です。最近は『贄姫と獣の王』『蒼竜の側用人』『偽りのフレイヤ』『砂漠のハレム』といった作品が人気上昇中です! いずれも現在4~6カ国で翻訳されています。

左:『贄姫と獣の王』(友藤結) 右:『蒼竜の側用人』(千歳四季)

芯のある主人公が自分の意思で動いて運命を切り開いていくとか、感情移入しやすいとか、物語性があるとか、そんなところが海外ファンの心もとらえているのではないでしょうか。すでに海外でも不動の人気を誇る『暁のヨナ』も昨年のバルセロナマンガフェアで「ベスト少女漫画」を受賞しています。

バルセロナマンガフェアで「ベスト少女漫画」を受賞した『暁のヨナ』(草凪みずほ)

――どれくらい人気だと海外版が作られるのでしょうか。

韓国・台湾の出版社は日本の作品を連載時からチェックしていて、新人の作品でも面白いと思えば新刊が出るとすぐにオファーします。逆に欧米は、巻数がまとまって物語の方向性がはっきりしてからのオファーが主で、刊行スケジュールを立てて慎重に考えられていたのですが、最近は欧米の読者もリアルタイムでマンガを読むことを求めているので、どんどん早くなってきています。世界とのタイムラグがあまりない感じになっていますね。

まだ単行本が出たばかりなのに「このマンガは何巻で完結なの?」なんて欧米の方に聞かれることもあります…(笑)。今では「面白いマンガを他よりも早く発掘すれば、ちゃんと儲かる」ことが各国に浸透したのだと思います。欧米各国の中でも特にオファーが早くて、販売告知に積極的なのがフランスです。

『高嶺と花』の翻訳版をフランスで出した際に、出版社がとても販促に力を入れてくれて、集中的にプロモーションを打ったんです…! 宣伝のひとつとして「フランスパンを持った高嶺さん」のスタンディを作って、「高嶺さんの天下取り」キャンペーンのフランス版をやりました!

フランス視察中の高嶺さん

このキャンペーンは、高嶺さんが日本全国を視察して、各書店をジャックするものだったんです。それをフランスでもやりたい!ということで、作者の師走先生に描き下ろしをお願いしたら何とイラストを描いていただけて…すごく盛り上がりました。

さらに!これが功を奏して、一昨年『高嶺と花』がフランスのジャパンエキスポアワードの「一般部門ベスト少女マンガ賞」をいただきました…! 手を尽くして広めたことで注目され、賞を獲り、さらに欧米の各国からのオファーがどんどん増える、嬉しいことになりました。

このように海外の出版社の方々と一緒になって、作品の読者を広げていくことが私たちの大切な仕事です。

マンガを通して日本を知る

――日本のマンガに馴染んでくると、日本の面白いものを知りたいと、読者が求めるようなこともあるのでしょうか。

ありますね。ほんとにマンガから入って日本の文化を知る方も多いみたいです。フランスの出版社が出した冊子があるんですが…

『 Shojo ADDICT』。「SHOJO」や「SHONEN」の言葉は世界に浸透しています。

おにぎりの作り方が載っていたり、別の号では唐揚げの作り方も紹介しています(笑)。

この冊子は自社で翻訳出版している日本の少女マンガの新刊を紹介するもので、作品と一緒に日本の文化も独自に紹介して興味を持ってもらい、マンガを読んでもらうことにつなげているんです。

――少女マンガ作品の紹介冊子に「おにぎり」の作り方は、とても斬新な発想に感じられますね。

おにぎりは『フルーツバスケット』の影響も大きいかもしれませんね。フランスのジャパンエキスポでは、おにぎりの屋台が出ていてコスプレをしたファンが食べていたり、海外の出版社の方の中にはメールアドレスが「onigiri」の方もいらして、『フルーツバスケット』が好きだから、とおっしゃっていました(笑)。

海外で絶大な人気を誇る『フルーツバスケット』

そういった日本のマンガを愛してくれている方が、今は海外の出版社で日本のマンガをチェックしています。日本にいらした時には、もちろん書店のディスプレイを回っていろんな作品を見るそうです。

今はWEBでもマンガをチェックできますし、日本のマンガを心から愛して、良いマンガを広めたいって方は世界中にいるんですよ。

作家になったらぜひ一度海外へ!

――海外の出版社さんから、インタビューやサイン会のオファーもあるんですか?

もちろん、海外の出版社さんからのお願いは多くあります。直近で行われたサイン会ですと、『覆面系ノイズ』の福山リョウコ先生のサイン会がありました。昨年の8月にドイツのイベント「アニマジック」で行われたんです。

サイン会では、キャラのコスプレをしてくる方もいれば、先生にプレゼントを持ってきてくれる方もいて、先生と読者のふれあいがたくさんあって、大変盛り上がったそうです。

また、インタビューでは今、『ベルセルク』の三浦建太郎先生の企画が上がっています。フランスのとある全国紙のWEB版に掲載される予定なのですが、これは『ベルセルク』をマンガファンだけでなく一般層にも知ってもらうためのプロモーションです。

――海外の出版社も、そこまで広めようとしてくれているんですね。

それが嬉しいですよね。あと、もうひとつ忘れちゃいけないのが台湾! 台湾は熱いです。毎年2月と8月に行われるマンガの大きなイベントでは、マンガ出版社が大きなブースを出してコミックスや限定グッズの販売を行ないます。また会場内のステージでサイン会を行うんです。それが、ステージショーみたいな感じですごいんですよ。

司会が出て盛り上げてくれたり、先生が登場する際に、お客さんに「センセイダイスキ!」って声を合わせて言ってもらったり。先生が中国語で「どうぞよろしく」ってあいさつすると、ワーって歓声が上がって…ライブっぽい感じです。

海外の読者にとっては先生方が遠い存在なので、自分の国に来てもらえるのがすごくうれしいんだと思います。海外のファンのみなさんの熱量には本当に圧倒されますよ!

台北動漫節でのサイン会の様子

一緒に海外に行きましょう!

――これから新しい作家さんを発掘する場として、「マンガラボ!」がスタートしますが投稿を考えている方にコメントをお願いします。

マンガParkに、青年マンガも少女マンガも一堂に会しているように、白泉社は部署間の連携ができている会社です。編集者もマンガを愛して親身になってマンガ家のことを考える人ばかりです。安心して白泉社に投稿していただいて大丈夫です!

国や時代によっても、紙かデジタルかといった読まれる形態が変わっても、物語の本質は変わらないと思っています。面白いマンガを描いていただければ、きっと世界中で人気になるはずです。

日本の良い作品をどんどん海外に紹介して、日本だけでなく海外のヒットにも繋がるように私達も精一杯がんばりたいと思います! ぜひ一緒に白泉社で世界へと作品を届けましょう!!

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