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2018-12-25

編集長からすべての作家にラブコール! ヤングアニマル編集長・永島隆行 魂の叫び!!

もし、「マンガラボ!」に投稿した作品に複数の雑誌の編集者からオファーが届いたら…あなたは誰を選びますか? 思ってもみなかった編集部から熱いオファーが届くなんてこともあるかもしれません。

今回は、各雑誌を代表する編集長から将来、白泉社の作家となるかもしれないみなさんへの熱いメッセージを聞いてきました! 個性豊かな編集長&編集部の魅力をご覧ください。

【調査隊チェック!】

1981年に創刊された月刊少年漫画雑誌「少年ジェッツ」を源流とする、白泉社の少年・男性向けコミック誌の流れをくむ「隔週刊青年マンガ誌」。直接の前身は1989年に発行された「月刊アニマルハウス」となる。『あばよ白書』(立原あゆみ)、『砂の薔薇』(新谷かおる)、『ベルセルク』(三浦建太郎)など「アニマルハウス」から引き続き掲載された作品に加え、『ふたりエッチ』(克・亜樹)、『エアマスター』(柴田ヨクサル)、『拳闘暗黒伝セスタス』(技来静也)、『藍より青し』(文月晃)、『ああ探偵事務所』(関崎俊三)、『デトロイト・メタル・シティ』(若杉公徳)、『自殺島』(森恒二)、『3月のライオン』(羽海野チカ)、『あそびあそばせ』(涼川りん)など、アニメ・ドラマ化も果たした人気作を送り出してきている。2019年にも、連載中の『上野さんは不器用』(tugeneko)のアニメ化が決定している。

【永島編集長の推しコメ】

「ヤングアニマル」は20~30代の男性がメインターゲットです。でも、掲載されている作品のジャンルや内容は幅広く、男性向け・女性向けとジャンルを限らずに両方の読者層を狙っていける本でもあります。メディアミックス化も含め、アウトプットしやすい土壌づくりを編集部でも意識しており、「ここは負けない!」という強い武器を持つ作家さんが、キャリアや性別を問わずに活躍していただける場だと思います。

「“いいマンガを創りたい”を命題に、多彩な作家さんが活躍できる場所」

現在の「ヤングアニマル」編集部には、20代前半~30代半ばを中心にほぼ全年齢層の編集者がいます。基本的には濃い目のマンガ好きの男性をターゲットにしていますが、もともと連載作品の幅が広い雑誌なので、所属する編集者の性格もいろいろです。僕自身、今は「ヤングアニマル」の編集長ですが、その前は「花とゆめ」で『覆面系ノイズ』(福山リョウコ)などの少女マンガの担当をしていましたし、その一方で『デトロイト・メタル・シティ』の若杉公徳先生の担当もしたりと、男性・女性といったジャンルに縛られない作品を担当してきました。仕事のスタイルも人それぞれで、フットワークが軽く、どんどん作家さんに声をかけて会いに行くタイプもいれば、担当作品にみっちり付き合って、編集部側で入れるリードひとつにまでかなりこだわるタイプもいます。

雑誌としてのスタンスは、とにかく“いいマンガを創りたい、載せたい”というものと、作家さんのキャリアや得意なジャンルを問わず「ヤングアニマル」だから載せられたよね、という“濃い”マンガを増やしていくことです。今までの連載の中には、少女マンガ作家として成功した羽海野チカ先生が棋士たちの熱い勝負や戦う人生を描いた『3月のライオン』や、圧倒的に濃密でシリアスなダークファンタジーの『ベルセルク』のように、マンガ業界の中でも高い評価を集める作品がありますが、そういった他誌では見られない「うちだから出てきた」といえる作品を、もっともっと増やしていきたい。そのために、他誌で描かれているプロの作家さんに対しても、編集者が惚れ込んだなら積極的にアプローチさせていただいています。とはいっても、声をおかけする場合はこちらがその方の作品に強く惹きつけられるものを感じてそうしているので、作家さんに都合があれば待つことは苦にしません。これは新人の方に対しても同じで、例えば「マンガラボ!」に応募された方に「花ゆめ」と「ヤングアニマル」の編集がそれぞれ声をかけたとして、作家さん自身が「少女マンガが描きたい!」と思うなら「花ゆめ」を選んでもらって全然OK。でも、作家さんの体が空いたとか、新しいことをしてみたいと思った時には「うちで一緒にやってみませんか?」と言える関係ではいさせてほしい…みたいな。好きになったら、いい意味でしつこい感じでしょうか(笑)。

「なにかひとつ“強い武器”を見せてほしい」

ヤングアニマルでの新人作家さんの育成は、投稿や持ち込みをきっかけに担当がついて、新人賞を突破するには…というところから一緒に話し合い、ステップアップしていってもらうオーソドックスなスタイルになります。編集部が欲しいと思う人は、やっぱり何かひとつ“強い武器”を持つ方ですね。根底に「マンガづくりが好き、こういうジャンルが好き!」という気持ちを持った上で、絵に個性がある、アイデアや切り口が新しい、この人でないとこのセリフは出てこないなと思わせてくれるドラマが描ける。そうした部分を持つ人と一緒にマンガを創りたいです。

その上で「マンガラボ!」に関して言うと…。「ヤングアニマル」も含めて、漫画賞って基本的には24ページとか32ページとかの量で、絵も、中身もある程度のクオリティを備えたものを見せてもらう必要があり、それらが最低限クリアできていないと受賞はまず難しかったですよね。でも「マンガラボ!」は、絵だけとか、途中までのマンガやネームだけの状態でも、僕らがチェックできるシステムになっている。映画の予告編って「こんな話が始まるんだよ」というのを断片的なパーツで見せるだけなのに、すごくワクワクできるじゃないですか。マンガを構成するパーツや、その人なりの組み合わせ方で期待させてくれる人と出会えるのかなと思っています。「ヤングアニマル」は原作と作画の先生が分かれた分業作品も多いんですが、今までネームが書ける原作者の募集ってあまりちゃんとやったことがなくて。そうしたストーリーテラーの方を発掘できる場にもなり得るし。普通の漫画賞の枠の中で僕らが今まで見落としていた才能と出会える可能性に期待しています。

「作家本位の制作体制で、バックアップは万全です!」

客観的な目線で、作家さんの武器を見つけてあげるという、“編集者の仕事”がきちんとできるスタッフが揃っているのは、白泉社の他のマンガ誌と同様です。「あなたのマンガはここがいい、ここを伸ばすといい」といったアドバイスをしたり、資料探しとかの細かい知識が必要な部分をフォローしたり、作家さんがひとりで考えすぎて限界になりそうなときに支えてあげるとか、そういった面でのサポートは労を惜しみません。それと同時に、作品を売るためのビジョンを編集部と個々の編集者がきちんと考えているのもアピールできるポイントだと思います。先日重版がかかった『魔女は三百路から』(原作/原田重光 作画/松本救助)では、いろんなサイトにアプローチして、主人公の魔女がアラサーではなくアラ300(歳)っていうユニークな切り口をわかりやすく伝えた上で、作家さん自身がツイッターでどんどん拡散してバズらせたり、帯コメントを東村アキコ先生にお願いしたり。そうした多方面で話題にしてもらえるようなプロモーションを狙っていますし、それがアニメや映画のようなメディア化される作品の多さにつながっているかなとも思います。

また、最近は編集部として、デジタルを中心に作家さんが活躍できる場所を意識的に増やしています。「マンガPark」にもうちを経由して連載されている作家さんが多いですし、編集部単体でも11月からデジタル版月刊誌の「ハレム」という新雑誌も創刊しました。“エロス”をテーマにした本なので、その意味で縛りはありますが、作家さんは男性女性どちらもいて、内容も男性向け、女性向けと読者を限定することなくバラエティのあるものを載せています。1号目の表紙になっている『この愛は、異端』(森山絵凪)は増刊だった「ヤングアニマル嵐」から出てきた作品ですが、女性読者にもすごく好評で、デジタル版がものすごく売れているんです。そうした読者層との親和性も考えつつ、多くの作家さんが作品をアウトプットできるチャンネルを増やしているところにも注目してほしいですね。

あとは前述のように、作家さん本位でいい作品を創ることを雑誌の命題にしていますから、こちらが惚れ込んだ作家さんに対しては、キャリア、性別を問わずに手厚く対応をさせていただいています。特に青年漫画の場合、作家さんの年齢層が比較的高く家庭を持っている方も多かったりするので、極力、生活を考えてあげるのは当たり前で。そうした金銭的な部分って具体的なところは表立って話しづらいんですが、一緒に新しいマンガを創るうえで、あらゆる面から作家さんをきちんとフォローすることを強く意識しています。

「青年誌で活躍したい女性作家の方もウェルカム。実績もあります!」

白泉社という会社の特性上、「マンガラボ!」に投稿されるのはやっぱり少女マンガ志望の女性作家さんが多くなるのかなと思うんですが、「ヤングアニマル」はそうした方たちが青年誌で活躍できる可能性を見出してあげられる立ち位置でもあると思っています。人それぞれではありますが、女性作家の方って、やっぱり男性作家とは視点が違っていて、いかにキャラクターを魅力的に見せるかにこだわった、すごく深い心理描写に長けた方が多い印象があります。「マンガラボ!」はそうした方にこちらから声をかけることもできますし、僕らが青年誌に合うと感じた方がいて、本人に希望していただけるなら、ぜひ声をかけさせていただきたいと思っているんですよね。『3月のライオン』の羽海野先生をはじめ、「ヤングアニマル」連載陣の中には女性作家さんもいますし、僕のように少女マンガ編集の経験を持つ編集者も多いので、女性作家さんが悩みがちな青年誌に向けた作品の方向性や、描き方について相談できる環境は他と比べても充実していると思います。もちろん、男性作家さんもウェルカムで、僕個人としては、男臭い骨太なバトルものだったり、熱いスポーツものだったり、ノリや勢いのある作品も見てみたいと思っています。女性作家も男性作家も、面白ければちゃんと売れるという実績を出せていることを信頼していただいて、新しいヒット作を生み出せると嬉しいですよね。

「マンガラボ!」編集チームが見た「こんな人におすすめ」

ちょっと飄々とした雰囲気も漂わせつつ、人当たりのよい口調で「ヤングアニマル」の目指すところを語ってくださった永島編集長。お話からは、バラエティ豊かな連載陣とスタッフを抱える雑誌を率いるにあたって、あくまで作家さん本位の姿勢を重視していることが感じられました。

青年誌らしい“なんでもアリ”なラインナップが魅力の「ヤングアニマル」だけに、作家に求められるのは、枠にはまらない情熱と個性。既存の雑誌の枠にとらわれない作品を描いてみたいという挑戦心あふれる人は、ぜひその広かれた門を叩いてみてください!

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